独自に編み出した「グラスサンドアート」を、子供たちへ伝えたい
プロフィール
グラスサンドアートジャパン代表・砂絵師 植山善生先生
ブラジルの「サンドボトル」に魅了されたことをきっかけに、独自に「グラスサンドアート」を生み出したサンドアートの国内第一人者。沖縄を拠点にリアル・オンラインによる体験教室や、グラスサンドアート作品の制作・展示を行う。『マツコ&有吉の怒り新党(テレビ朝日)』『めざましテレビ(フジテレビ)』などテレビ出演も多数。
小さなグラスの中に、砂によって美しい空や海が描かれる「グラスサンドアート」の世界。「ルクミー 体験パーク」で1時間で小さなお子さんも作品作りが楽しめるオンライン体験を提供してくださっている植山善生先生に、グラスサンドアートの魅力や体験教室を広め続ける理由について伺いました。
お土産にいただいた「sand bottle」との出会いが人生の転機
40数年前、当時20代前半だった私は外国航路の“船乗りさん”でした。世界各国の海を渡って過ごし、一度の航海が10ヶ月以上にも及ぶこともありました。そんなある時、ブラジルのお土産に「sand bottle(サンドボトル)」をいただきました。
お酒の空きビンと思われるボトルに、色とりどりの砂で風景が描かれているものでした。「なんて美しいのだろう!」と私はすっかり魅了され、自分でも作ってみたいと思うようになりました。
ブラジルの「sand bottle」(写真は植山先生提供)
砂を絵にするにはどのようにしてボトルに砂を詰めるのか?どんな道具を使うのか?完成品が崩れないためには?と、最初はわからないことばかりでしたが、何年にもわたってさまざまな研究を続けました。
中でももっとも難しかったのは、砂にきれいな色を付けることでした。最初は絵具で染めてみましたが、砂が固まってしまいうまくいきません。試行錯誤をするうちに「手染め」で染められる方法にたどり着きました。
植山先生オリジナルのカラーサンド。空の「青」だけで10色以上。全部で70~80色の砂を使い分けているのだそう。
絵も最初は砂を重ねて作る「模様」しか表現できませんでしたが、色々試しているうちに「虹」が作れるようになり、そして「カモメ」や「クジラ」がグラスの中に描けるようになりました。
こうして独自で開発した砂を染め上げる技法や、絵の描き方、そしてボトルではなくグラスに砂で描く方法を編み出し、26~27歳のときに「グラスサンドアート」と名付けたのがはじまりです。
グラスサンドアートの魅力を伝える体験教室
当初は砂絵師として主に沖縄の美ら海や沖縄の景色を作品にし、展示や土産品として販売していましたが、作品を見て「自分も作ってみたい」というかたが出てきました。作ってみたいとおっしゃっていただけるのなら、グラスサンドアートの魅力をひとりでも多くの人に広めたいと思い、体験教室をスタートしました。沖縄のホテルに宿泊しているお客さまや、ショップでの対面教室で数多くのかたにグラスサンドアートを体験いただけるようになりました。
体験教室の様子。
2019年ごろ、グラスサンドアートの魅力や歴史をもっと広めたいと思い、オンラインで「グラスサンドアート講演」もはじめました。すると今度は、オンラインでグラスサンドアート作りを教えてほしいという遠方のお客さまの声もいただくようになりました。グラスサンドアートは、グラスに砂を落とすちょっとした角度や分量、力加減がとても重要です。オンラインで伝わるかな?という不安もありましたが、ちょうどそのころ新型コロナウイルスの流行が始まったこともあり、思い切って「オンライン体験教室」をはじめました。
植山先生の作品。大きな作品は仕上げるのに4ヶ月もかかることも
カモメの絵が完成した時のお子さんの笑顔が嬉しい
オンラインならではの苦労ももちろんあります。先ほどお話ししたように、オンライン体験では私が手を添えてサポートして差し上げることができません。どのような言葉、どのようなタイミングで伝えたらわかりやすいかな?とくに小さなお子さんの場合は、そばにいるお母さん・お父さんにどの部分をお手伝いいただくと良いかな?と、いろいろな方法で試行錯誤を重ねました。
先生のカメラは2台。1台は手元のみを映して説明しています。
もちろん今でもうまくいかないこともありますが、例えば私の側のカメラを2台にし、1台は手元だけを映すようにしたり、お子さんが動作を始める前に「まず見ててね、やってみるからね」と最初に手元をお見せして解説するなど、せっかく体験いただくなら素敵な作品が完成するようにといろいろな工夫をしています。
「ルクミー 体験パーク」のグラスサンドアート体験では、「模様」「お花畑」「沖縄の風景」の3つのグラスサンドアート作品から、お子さんが好きな1点を選んで制作します。1時間の体験ではありますが、できるだけ多くの技やコツをお伝えするようにしています。お子さんにも保護者さんにもとくに人気があるのは「カモメ」を作る場面です。「カモメ」作りは力加減が難しく繊細な作業ですが、最後に砂をかぶせて「カモメ」が浮かび上がると、お子さんが「わぁ!」といってとびきりの笑顔になり、それを見守る保護者さんもとても嬉しそうになさっています。まさに60分の体験のハイライト。うまくできあがった時のこの笑顔を見られるのは、私にとっても嬉しい一瞬です。
グラスに浮かび上がる「カモメ」。これをきれいに描くには、ちょっとしたコツが必要!※写真は6歳児の作例です
グラスサンドアートで、想像力を働かせる楽しさを
お送りしているキットには11色の砂を1回の体験用よりもかなり多めに入れ、体験教室のあと、お子さんがいくつも自分なりの作品を作れるようにしています。一度体験いただくと、なんとなく砂の動かし方がわかってくると思います。あとは想像力を働かせて、たとえば丸い太陽をさらさらとした砂どう動かして描くか、とお子さんとお父さん・お母さんとで考えてみていただけたらいいなと思っています。
↑体験キットには植山先生手作りの11色の砂のほか、グラスサンドアートに必要な道具が含まれています
私も最初は虹・カモメ・クジラしか描けませんでしたが、「こうしてみたらどうなるかな?」と色々試しているうちに、できることが増えてきます。偶然、思いがけない絵ができあがることもありました。例えば、「ニワトリ」を描きたいと思っている時はなかなかうまくいかなかったのですが、お客さまに「ネコを描いてほしい」とオーダーをいただき、ネコを試している途中になぜか「アヒル」ができあがり、そこから「ニワトリ」に到達したこともあります。
お子さんがグラスサンドアートに興味を持っていただき、のびのびと自由な発想でトライアンドエラーをしながら、作品作りを楽しんでいただけたら嬉しいですね。